コミュ -黒い竜と優しい王国-

このおとぎ話の登場人物は誰もかもが皆道化だ。


他者と交わることの痛みに怯え孤独であろうとする心、痛みに悩まされるがゆえに差し伸べる手。
孤高にも群体にもなりきれない中途半端な道化師たちのおとぎ話。
”魔女”も”正義の味方”も”うそつき”も”偽メイド”も”チンピラ”も、ラベリングは違えど皆同質。

何ものもよせつけないはずの魔女は道化を求める。
正義の味方は血に濡れて不完全となり、嘘つきは世界に正直となる。
何事にも執着しないはずの偽メイドは繋がりに引きずられ、チンピラは情に絆される。


物語は救いも希望もない不条理で構成されています。
絆から受ける痛みを恐れ孤独にあろうとした彼らですが、人との繋がりは捨てきれるものではなかったのかもしれません。
そこには救いも希望もなく幾つもの絶望に襲われます。『それでも、と―』彼らは抗い続けます。
馬鹿にされ、世界の敵となった彼らの残した結末は彼らだけが知っています。
その真価は最後のCGを目にすることで理解できるのではないでしょうか。
私は目にしたとき、ただ「楽しそうだ」と思いました。
あれほど傷つき絶望し不条理に嘆き社会から弾き出されまでした彼らの生活が、あまりに楽しそうだった。
夢も希望のない優しい王国で必要とされるのが「おとぎ話」であるのならば、彼らの集ったCGに憧憬の念を抱くのならば。
作品と世界とが結びついた現われなのでしょう。



プレイ後、激情を保存するためにレビューをまとめる中でふと気づきましたが
コミックのARMSを今一度読んでみるとおもしろそうです。


以下ARMSより

人の足を止めるのは"絶望"ではなく"諦観(あきらめ)"
人の足を進めるのは"希望"ではなく"意思"


メインビジュアル級なのに、ルートが用意されなかったお春さんかわいそうです(´;ω;`)ブワッ